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なぜ、災害後の工事は遅れるのか? ~千葉県の事例から (9/21時点)

前回に続き、「災害 × 建設会社」の第二回です。

前回記事:台風・水害に備えて建設会社が確認しておくこと

千葉:1年経っても申請の6割しか工事完了していない

昨年9月に千葉県に大きな被害をもたらした台風15号・19号。住宅の一部損壊は7万棟に上りました。
千葉県では被害を受けた住宅の修理に関し、独自の公費補助をしていますが、1年が経過した今でも、修理が完了したのは申請件数の6割に留まっています。(それでも2.4万件の申請に対し、1.5万件の工事が完了していますので、凄い数ですし、現場の工事会社が苦労しているのは間違いありません)

なぜ、災害後の工事は遅れるのでしょうか?

現場では何が起こっているのか?

千葉県の公表資料は以下の通りです。

地元の工事業者への修繕工事の依頼が集中し、着工が遅れている地域があることから、地域外の工事業者を紹介する「被災住宅工事相談窓口」の活用を案内

この事象を、より詳しく検証してみます。
弊社は、昨年、千葉県より住宅の応急工事(ブルーシート展張)について事業を受託した後も、現場でのヒアリングを行ってきました。その内容を以下の図にまとめ、”コロナ後”の論点も踏まえながら、内閣府主催のイベント等でお話しさせていただいています。

▼災害後の工事の実態を以下の図にまとめました。

図1

【被災者】
・千葉県内の一部損壊家屋は約7万件。多くが屋根の損壊
・業者が来ないからと被災者が屋根に上る ⇒ 転落事故
一つの業者(家族経営、一人親方含む)に2~3百件の工事依頼が殺到

【地元工務店】
・工事依頼殺到 ⇒ 地元以外の協力会社と接点が無い工務店も多い
・建設業界の協力会社探しは未だに取引先からの紹介と電話帳頼み
・電話帳=詐欺まがいの行為を働く業者もあり、判断が難しい
・ホームページ=ない会社も多く、あっても実績など重要な情報少ない

【結果的に…】
結局、親しい取引先からの紹介で、地元工務店が親しい職人と組んで細々と工事をしているので時間がかかる
⇒ 住宅の修理を諦め、解体をして転居する人
  修理が進まないうちに住宅の劣化が進む⇒修理費が高額に

まとめると、課題は以下2点です。
①地縁:地元以外に協力会社の接点が無い
②情報:ホームページなどのIT化、精度の高い情報公開の遅れ
建設業が抱えている課題が、そのまま工事の遅れにつながり、それが地域住民の流出にまでつながっているのが現実です。

具体的には以下の課題もあります
・県外から職人が施工をしたいと被災地に入ってきても
 「発注判断に必要な情報」が無いため、判断が難しい
・ボランティアを装った悪質修理業者の存在で、被災者が警戒心を抱く
・遠方から来た職人は交通費、宿泊費負担がかかる

復旧の核になる地元工務店と広域連携・予備防災

7月の熊本の豪雨災害では、これまでの災害の教訓を活かし、地元の工務店が「復旧の核」になった事例がありました。県外の工事会社を集め、地元との混合チームで復旧に当たったそうです。
鹿児島のある工務店では、電話でこれまでの施主(OB顧客)に被害状況確認⇒スタッフが県内各地を回って応急処置の形で丁寧にフォローを行っています。一方で、「別のハウスメーカーは一切フォローが無かった」という声もありました。

前回記事でも触れた仙台の建設業協会では、東日本大震災の教訓を踏まえ、浜松の業界団体と連携協定を結ぶなど、地域を跨いだ広域連携と予備防災の動きが始まっています。震災を経験した仙台の建設会社社長は以下のように協定の背景を説明しています。

「人口減少社会に入っているのだから、これまでとはまったく違う。東海、東南海、首都直下地震が来たら、皆の力を合わせないと本当に街を直せない。災害は必ず来る。ならば『来たらどうする』の話を具体的にしなければならない」

コロナ禍で受注が減る中、「様々なネットワークを駆使し、復旧の核になる工務店」になれるかどうかが今後の経営のポイントになってきます。
また、OB顧客に対して災害時の対応をきちんと伝えておくなどの日ごろのコミュニケーションも重要になってくると考えられます。

▼参考記事
https://www.reform-online.jp/news/reform-shop/18227.php

地元以外に取引先がない…を乗り越える

先述の建設業の課題を乗り越えようとしているのが工事会社に特化したオンラインプラットフォーム「クラフトバンク」ですし、それを災害時に活用したのが昨年の千葉県事業になります。

プラットフォームを活用すると、
・地域を越えた接点も作ることが可能になる(広域連携)
・ホームページが無くとも無料で情報公開が可能になる(IT化・情報公開)

この2つが、パソコン・スマホだけで可能になります。

会員からも「当初はネットで取引先を探すなんて…とためらっていたが、今ではネット経由の仕事の方が多くなった」という声が届いています。今後は、こういったITツールの使いこなしが、災害などの有事だけでなく、平時の建設業経営においても大きな差になっていくものと考えられます。

クラフトバンクと当総研は、「核になる工務店」の支援になる情報発信を続けています。

さて、次月からは、「忙しいところとそうでないところがバラバラ」というコロナ後の建設業の動向を独自データで分析する「工務店・コロナサバイバル」特集です。

関連記事

▼千葉県事業と課題を踏まえた今後の想定
 地元企業が核となって復旧に従事するスキームについて

この記事を書いた人:髙木 健次(ConTech総研)

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クラフトバンク総研は、「Construct the Connection」をテーマに、民間建築業界のいまとこれからを研究・発信してまいります。 建設系専門紙で連載中 https://chikalab.net/rooms/112

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