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"コロナ後"の建設業③ ~"バラバラ"時代の生き残り策(2020年12月版)

「受注多くて…施工を頼める先が無くて困っています」
「コロナで受注が減ったし、集客しても反応が悪くて…」
「コロナの後、建設業界はどうなるか不安で」
「え?あそこが倒産・廃業したの?」
コロナ後の受注について、弊社が運営する工事会社のマッチングプラットフォーム「クラフトバンク」に届く声はとにかく"バラバラ"です。
コロナ後の建設業界に不安を感じる方、今後の見通しが気になる方向けに、上記のようにコロナ後の建設業の"バラバラ"な動向をデータに基づき検証するシリーズの第三回です。

これまでの連載
大手決算等の分析 ↓
"コロナ後"の建設業① ~”バラバラ”業績を読み解く(2020年10月版)

電気、足場、塗装、大工など、工種別の動向等のまとめ ↓
"コロナ後の建設業"② ~電気は忙しい、足場は厳しい?(2020年11月版

2021年の建設業界動向予測
3分で読める 2021年 建設業界 動向予測 ~ 差が開く1年

今回は、より具体的にコロナ後の建設業の生き残り策「バラバラな中で求められる切り替え」について考えます。

1:2020年廃業数ランキング2位は建設業

2020年1~10月に休廃業・解散した企業の業種別ランキングです。

図1

件数1位はコロナの影響を受けやすい宿泊等のサービス業ですが、建設業は2位です。昨年同期間の実績と比較した増加率でも24%と、全産業3位となっています。

今回のコロナ支援策の多くは借入です。よく活用される政策金融公庫の融資制度は最大借入期間が15年。建設業の経営者の平均年齢が59歳であることを踏まえると、「15年後、借金を返しきれるか?という不安」と、「辞めるきっかけが出来た」と廃業を選択する企業が増えていると考えられます。

2:コロナ後の世界はとにかく"バラバラ"

廃業も増加する中、8月以降、今期の業績見込みを上方修正、対前年比プラスを見込む企業も増えています。
コロナ後の建設業は「全て悪くなっている」わけではなく、「プラスとマイナスが混在」するのが特徴です。各社借入が増える中、それを返済するためには「来期以降、コロナ前よりも売上を確保しなくてはならない」会社が多いはずです。そのためには「悪くなっている領域・地域にしがみつかない」「切り替え」が重要になります。

9月までの民間建築分野(公共・土木除く)の各種統計を分析し、作成したのが下記の図です。

図4

非住宅は「倉庫」が大きく伸び、「事務所」がやや悪化に留まる一方、「店舗」と「工場」が大きく悪化しています。

住宅では首都圏や京阪神地域よりも、東海地域やそれ以外の地域の方が悪化しています。正確には県単位で全く傾向が異なり、特に、岩手、奈良、佐賀、沖縄等の地域で突出して悪化しています。

工種別では電気、空調、給排水などの「設備系」が伸び、足場、塗装、大工などの「外装系」が悪化しています。内装、クロスなどの「内装系」は若干の悪化に留まっています。

10月の記事の通り、上場企業(住宅)の決算も、住宅展示場経由の受注が多いかどうかが影響し、各社バラバラになっています。

住宅系の最新記事を見てみると、「購入検討者の訪問数は2018年2.6社から2020年は2.2社に」とあります。「これまで3社検討していた人が自宅で対象を絞り、2社しか訪問しなくなっている」とも言えるので、「検討時の上位2社」に入っていない企業は受注を減らし、「上位2社が総取り」するという構図になっていると考えられます。

3:元請/発注者は「工事会社確保=投資」の視点を

発注者(元請)は「これまで請けてこなかった工事内容に挑む」「隣県の工事を請ける」等の「切り替え」のタイミングで、既存の工事会社体制では対応できない事態が想定されます。
元請は、施工能力以上に売上が伸びません。施工要因の失注も現場レベルでは発生しています。廃業が増え、人手不足も懸念される中、工事会社要因で売上が減る事態もあるでしょう。「工事会社確保=コスト」の視点だけでなく、「工事会社確保=事業維持・拡大のために必要な投資」の視点も求められます。

図2

実際、弊社にも地方ビルダーが都市部に進出する際の工事会社確保の相談が来ています。住宅を購買する若年層も、職人も都市部に流出する中、地方ビルダーの拠点拡大の動きが広がっています。

4:工事会社は元請の選別と連携を

「下請」として工事を請けることの多い工事会社向けに前回記事の内容を再掲します。

・元請も会社によってプラス~大幅マイナスと業績がバラバラ 
 ⇒ 伸びている元請からの受注を目指す(1社に依存しない)

・地域によっては千葉の住宅着工など、既に対前年同期比を上回っている
 ⇒ 建設業許可の範囲で県外の受注も探っていく

設備系を中心とした伸びている領域の工事会社と連携する
 ⇒ 設備工事会社では請けきれない内装工事等を外に出したいニーズあり

他社の廃業をきっかけに発注に至ったケースも実際ある

この中でも特に重要なのが「売上依存度」です。
売上が最大の取引先でも全体の3割を超えないこと、と言われますが、特定の取引先に依存するほど交渉力は弱くなります。取引のある元請が、十分な受注を確保できていない可能性もあります。コロナ禍で、「昔から使ってるんだから安くしろ」と下請に値下げを求める企業もあるようです。「昔からの取引先」が「利益をもたらしてくれる取引先」とは限りません。たとえ、それが親族や同じ学校の先輩の会社であってもです。

なお、やや古いデータですが、2016年の中小企業白書によれば、「1社に3割以上の売上を依存している建設業は全体の5割」だそうです。

前回も書いた通り「自分たちの周囲に仕事が無い=世間に仕事が無い」と思いこまないことが大切で、情報を収集し、工事会社同士で連携して幅広に受注機会を探っていく必要があります。

5:言うは易し、行うは難し

以前の記事でも書きましたが、社長は会社の将来について真剣に考えていても、案外、その課題や緊迫感は社員に伝わっていないものです。先述の「切り替え」等、困ったときに社員が協力してくれるかは、普段からの社長と社員のコミュニケーションがポイントになります。
「具体的な数字で」現状を説明し、「業界の動向を事例をもって繰り返し伝える」ことをする必要があります。

「コロナで大変だから」と漠然と説明するのではなく、かといって不安をあおるでもなく、具体的に
「何が起こっていて」
「世の中に何が求められていて」
「何の協力をしてほしいか」
を伝えることが大切です。

次回から2020年の動向を踏まえた「2021年建設業界動向予測」です。

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この記事を書いた人:髙木 健次(クラフトバンク総研)

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クラフトバンク総研は、「Construct the Connection」をテーマに、民間建築業界のいまとこれからを研究・発信してまいります。 建設系専門紙で連載中 https://chikalab.net/rooms/112